ほんの記録

読書日記など、とりとめもなく

森嶋通夫『マルクスの経済学』解説(塩沢由典)

なんだか資本論の入門書、解説書が増えてきて(漫画まである)、古典として読むのならいいのですが、21世紀の今日でもこれを資本主義批判の根拠として考えている入門者がいるみたいなので、現在の標準的な経済学では資本論をどう考えているのか知っておくのもいいのではないかと思います。

ただ、もうこういうのは今更感があるようで入門者が目にする機会がほとんどないですね。政治的に社会主義が失敗した、だからマルクスはダメだとかいう話はTwitterでよく見ますが。

私が勧めるのは森嶋通夫著作集第7巻『マルクスの経済学』の塩沢由典による解説です。一部引用します。

森嶋以降のマルクス経済学は、しばらくは森嶋の問題提起にしたがってさまざまな数学的一般化が試みられた.マルクスの基本定理の拡張もその一部である。しかし、そのような方向に限界があることはしばらくしてひとびとの共通の認識となった。マルクスの基本定理こそ,広い文脈で成立することが分かったが,伝統的なマルクス経済学が正しいとしてきた諸命題は,ほとんど維持不可能なものであった.

 

(しかし)「資本主義の解剖学としての経済学」として置塩・森嶋の方法は十分ではないと考える異端者たちが,いまなおマルクスマルクスの経済学を弁護している.労働価値のこれらの擁護論は,結局,マルクスの資本主義批判を現在に生かしたいと考えているだけである.そのような擁護がマルクスを生かすものだとはわたしには考えられない.理論として,それらは後退的なものでしかない.しかし,解釈を変えればマルクスの立論が現在もなお有効であるという言説は,今後も紡ぎつづけられていくであろう.

 

森嶋通夫は)マルクスに論理の光を当てることにより,それを脱神秘化し,論理的・数学的な検討可能なものにした.その結果,マルクスの合理的核の大部分は,平明なものになった.しかし,この平明さこそ,一部のマルクス経済学者・マルクス学者にとって敵対すべきものである.それでは,マルクスの偉大さが隠されてしまう.かれらはそう感じ,宇野やアルチュセールや森嶋から離れようとしている.わたしの推測によれば,かれらは成功しないであろう.かれらの主流の経済学に替えて,もうひとつの経済学を構築しようとする意図はよい.しかし,マルクスの言説を再解釈するところからそれが生まれることはもはやないであろう.

 

 資本論をお勧めするのも、まあいいんですが、これまでの論争史を無視してはいけません。入門書でもこういったことにきちんと触れるべきだと私は思います。

 

森嶋通夫著作集〈7〉マルクスの経済学

森嶋通夫著作集〈7〉マルクスの経済学

 
マルクスの使いみち

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